だいすん の かんげきdiary

宝塚歌劇ファン歴3年目の初心者ですが、観劇の感想や思い出などを、徒然と書いていきたいと思います

月組公演『舞音ーMANONー』レポート 〜理性と感情のあいだ〜

お久しぶりでございます。
本当に久しぶりの更新で、どんな風に書いていたか感覚がなかなか掴めませんが、もうはや12月。
ということで、更新の方もぼちぼち再開したいと思います。


久しぶりの更新では、この間観劇してきた月組公演のレポートを書きたいと思います。


お芝居も、ショーも、どちらも素晴らしい公演だったのですが、まずはお芝居についての感想です。


例によって、ネタバレ満載の感想です。ご了承下さいませ。

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今回の観劇で、いちばん心が打ち震えたのは、第2のシャルルを演じられた、美弥るりかさんの演技でした。

表情やダンスという非言語的な手段のみを用いて、言葉では語られることのないシャルルの本心を表現するこの役。
言葉なくして、最も雄弁にお芝居全体にただようテーマを物語っていたのは、この第2のシャルルではなかったかと思います。



お芝居には、大きく分けて2つのテーマが描かれていたと考えます。
ひとつは、愛とはなにか・愛するとは何かということ、そしてもうひとつは、理性と感情の対立です。

前者の愛については、マノン(愛希れいかさん)やクオン(珠城りょうさん)、カオ(朝美絢さん)などベトナムサイドの登場人物達に関わるテーマだったように思います。愛を売るマノン、マノンとクオンの兄弟愛、ベトナムへの愛国心などなど…。(このテーマについては、後日、別記事で書きたいと思っています)


それに対して、後者の理性と感情の対立は、シャルル(龍真咲さん)やクリストフ(凪七瑠海さん)など、フランスサイドの登場人物を中心としたテーマだったように思います。
この物語そのものも、シャルルの心中での理性と感情との対立のありようによって動いていきます。


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第2のシャルルは、シャルルが母国・フランスを離れ、遠い異国の地・サイゴンの港に降り立った瞬間に誕生します。
貴族の長男として、秩序としきたりと規則の世界で生きてきた彼にとって、放埒さと不規則性に満ちたサイゴンは、とてつもなく新鮮な世界だったことでしょう。活気と熱情に満ちた南国の熱気に包まれ、彼の心の奥で眠っていた素直な気持ちが目を覚まします。

第2のシャルルは、堅苦しいボタンを外し、舞台上で羽を伸ばし、自由に動き回ります。見るもの聞くもの一つ一つに心をときめかせ、花を愛で、鳥を愛し、自分の素直な感情を飾ることなく表出しながら、異国の地を堪能します。


一方その間、シャルル当人はと言えば、背筋をピンと伸ばし、いかにも「フランス本土からやってきたエリート軍人」らしい様相で振舞っています。

恐らくシャルルは、将来的に家名を背負う立場になる者として育てられてきたのでしょう。幼い頃に父を亡くした彼は、幼ごころにそうした自分の責務を自覚し、「いつまでも子どもじゃいられない。僕がしっかりしなくちゃ」と、いわゆる子どもらしい気持ちを押し殺してきて育ってきたのかもしれません。


そうしたシャルルの育ちを考えると、第2のシャルルというのは、幼い頃に彼が自分の心の奥深くにしまい込んだ幼ごころ、言い換えれば、子どもらしさの象徴のように思えてきます。
美弥さん演じる第2のシャルルの表情を見ていると、少しあどけないような印象を受けたのも、そのせいかもしれません。


数十年ぶりに解放された幼ごころと共に、シャルルは一人の女性・マノンに出会います。
「高級娼婦」とも言われるマノン。もしフランスでシャルルが彼女に出会っていたら、心惹かれながらも身分的な差や自分の立場を考えて近寄ろうとはしないと思います。

しかし舞台はサイゴン。シャルルの心中で目覚めた第2の彼は「好きなものは好き!」と叫ぶ心です。シャルルがどれだけ否定し否認しようとしても、マノンに惹かれているのは事実。数十年ぶりに自らの声を挙げることを許された第2の自分自身の声に導かれるまま、シャルルはマノンを愛し、彼女にのめり込んでいきます。


シャルルのマノンへの惚れようは、まさに軍人らしからぬら体たらくですが、上記のような彼の心の動きを考えると、それも当然のことのように思います。

はた目から見ると、マノンに溺れるシャルルの様子は、まさに理性をかなぐり捨てて凋落していく過程そのものです。しかし、私はシャルルは、自らが凋落しているとはあまり感じていなかったのではないかと思います。

それよりも彼は、自らの感情に素直になって行動できる開放感の方をより強く感じていたのではないでしょうか。自制の心を働かせ、長らく自分の素直な思いを無視し押し殺してきた彼にとって、第2のシャルルも「第2」ではなく自分そのものだと言い切れることは、恐らくマノンを愛し愛されることと同じくらい、とても幸せなことだったと思います。


ここには書きませんが、第2のシャルルが終盤ついに挙げる「声」は、そうした彼の心中を象徴的に表現するもののように感じられました。

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なんだかとても真面目感の漂うレポートになってしまいましたね…。

本来は私はオッペケペーな人物なので、観劇中は概ね「たまさま(珠城りょうさんのことです)ヤバイ」とか「アオザイってこんなに色っぽかったっけ?」とかそんなことばっかり考えております。

次回は、ショーについてのレポートを、そんなオッペケペー感満載で書こうと思っております。

長文にお目通し下さった皆さまにお礼申し上げます。
ハッピーマルディグラ!!!


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