舞台のうえで生きるひとびと
連日、大盛況のなか熱演がくり広げられている月組公演『エリザベート』。
今日、主要キャストのフランツ・ヨーゼフを演じる美弥るりかさんの休演が発表されました。
月組 宝塚大劇場公演 休演者のお知らせ | ニュース | 宝塚歌劇公式ホームページ
理由は体調不良、復帰時期は未定となっています。
Twitterを見ていると最近喉の調子があまりよくなかったという情報もありました。『エリザベート』は歌の多い作品ですし、特にフランツの歌は美弥さんにとって少し高い音域の曲も多かったため、喉に相当の負担がかかっていたのかもしれません。
舞台は生物(なまもの)です。ごまかしや妥協を隠すことはできず、自らの一挙手一投足すべてが、観客の眼にさらされます。なにかミスや失敗があったとして、仲間には「○○がうまく出来なくて」と弁明をすることができますが、観客に対して弁明するチャンスは舞台人には与えられていません。
私たち観客は、演者の舞台を観て、彼女(彼)のおかれた状況を推測することしかできません。ときに、推測は噂を呼びます。邪推を呼ぶこともあります。ただ、推測はあくまでも推測。事実はいつも、舞台のうえでのみくり広げられるのです。
誰かが休んでも、舞台は続きます。
それは舞台の厳しさでもあり、また優しさでもあります。
支えてくれる仲間がいるから、これからも続く役者生活のために、いま美弥さんが休養をとることができるのです。
美弥さんの無念や悔しさ、悲しさは想像するにあまりあります。またファンの方々も胸が締めつけられるような思いをされていることでしょう。いまはただ、美弥さんが再び舞台でフランツとして息づく日々を、祈りながら待つしかありません。
月組がこれまで培ってきた組力を今こそ遺憾なく発揮して、代役の皆さまによる舞台も素晴らしいものとなりますよう、エールを送りたいと思います。
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宙組、オーシャンズやるってよ ~宙組公演ラインアップ発表~
みなさま、ご機嫌いかがでしょうか。だいすんでございます。
友の会がまったく友達になってくれず、今年最後の雪組公演のチケットをなんとしても先行先着でゲットせねばならなくなった今日、2019年4~7月の宙組公演のラインアップが発表されました。
2019年 公演ラインアップ【宝塚大劇場/東京宝塚劇場公演】<2019年4月~7月・宙組『オーシャンズ11』> | ニュース | 宝塚歌劇公式ホームページ
『オーシャンズ11』でございます。小池修一郎先生でございます。
最近、映画『オーシャンズ8』が公開され、かっちょいい女性がブイブイ言わせていたことも記憶に新しいですが、そこは宝塚。王道の『オーシャンズ11』で、11人で攻めてきます。
宝塚で『オーシャンズ11』が上演されるのはこれでもう3度目になるんですね。初演は2011年に星組(柚希礼音さん、夢咲ねねさんの主演)、再演は2013年に花組(蘭寿とむさん、蘭乃はなさんの主演)でした。
柚希さんも蘭寿さんも、骨太の「THE・男役」のイメージが強いトップさんでしたが、真風涼帆さんも骨太系トップですので、魅力的なダニー・オーシャンを演じてくれそうです。大らかで優しげなお顔立ちの真風さんですが、『メランコリック・ジゴロ』のスタンや『神々の土地』のフェリックスなど、少しスカした感じの役や明朗な印象の役もギャップにピタッとはまってしっくりとくるので、どんなダニーを演じられるのか、今から楽しみです。
真風さんは初演の星組公演にも出演しておられ、そのときは本公演ではライナスという弱気な青年を、そして新人公演では主役のダニーを演じておられました。新公で主演した役をトップスターとして再び演じるなんて、なんとも青春な感じで、グッときます。
同じ役を再び演じるで言えば、2番手の芹香斗亜さんも同様です。
何なら芹香さんはこれまで上演されたすべての『オーシャンズ11』に出ています。もはや『ヅカトーーク!』という番組があったら"オーシャンズ11ジェンヌ”として出ていただきたいくらい出演しておられます。芹香のいるところオーシャンズあり、です。
星組では新人公演で2番手役のラスティーを、花組では本公演で真風さんが以前しておられたライナスを演じ、新人公演で主役のダニーを演じておられます。
星組の新人公演では真風さんとタッグを組み、花組に組み替えして離れ離れになった後には、本公演・新人公演ともにかつて真風さんが挑んでいたのと同じ役にのぞみ、そして今、トップと2番手として宙組で再会したふたりは、かつて新人公演で共演した役に本役として再会する・・・。
もうドラマティック以外の何者でもないですね。舞台裏のあらすじがすでにアカデミー賞レベルのドラマティックさです。
再演ものは比較対象があるので難しいとよく言われますが、お二人にとっては過去の自分たちも(新人公演とはいえ)比較の対象に含まれます。およそ6~8年の時を経て改めて向き合うことになる『オーシャンズ11』。どんな作品になるか、ほんと楽しみです。
お二人以外にも、主人公ダニーの妻、テス・オーシャンを演じる星風まどかさん。
テスは結婚も離婚も経験した大人の女性という印象の役です。お披露目公演の『天は赤い河のほとり』のユーリは星風さんに等身大の役で、はつらつとした演技が素晴らしかったですが、今回は大人の女性の色香や雰囲気をどう醸し出してこられるのか、楽しみにしたいと思います。
まだ配役は分かりませんが、敵役のテリー・ベネディクトは、愛月ひかるさんでしょうか…?『神々の土地』以来、大劇場公演では何だか黒っぽい衣装が多い印象の愛月さんですが、ラスプーチンばりの狂った演技を、またテリーという役で見られれば嬉しいです。
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皇帝はつらいよ ~フランツ目線のエリザベート~
お久しぶりです。皆さまご機嫌いかがでしょうか。
だいすんでございます。
まず記事に先立って、このたびの西日本豪雨、大阪北部地震、台風21号、北海道地震で被害に遭われた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
一日もはやく、心と環境に平穏が訪れますことを、心からお祈りいたします。
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さて、ただいま宝塚大劇場では月組が『エリザベート』を絶賛公演中です。
トップ娘役・愛希れいかさんの退団公演であるうえに作品自体の人気も高く、チケ難中のチケ難でして、大劇場周辺の道路には、当日券の列を整備するための誘導シールがペタペタ貼られている状況です。
そんな『エリザベート』について、一言二言三言、語りたい!と思いがつのり、久しぶりのブログ更新となりました。お目汚しですが、ひとりよがりにしたためます。
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『エリザベート』。
タイトル通り、この作品はエリザベートのお話です。
宝塚版では黄泉の帝王・トートが主役ですが、トートはエリザベートの心のある側面を映し出す存在でもあるので、トートとエリザベートの2人が主役ともいえます。
そんな『エリザベート』を、まずはあえてフランツを中心にして語りたい!
なぜ?という疑問のお答えとしては、美弥るりかさんのフランツの色気がすごいからとか、モフモフのお髭が意外としっくりきてるとか、色々理由はあるのですが、フランツ目線から見ると作品の時代背景がよく分かるから、というのがいちばんの理由です。
以下、皇帝フランツの「つらいよポイント」にそって、述べていきたいと思います。
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問題ありすぎてつらいよ
フランツが皇帝だったころのオーストリアは、なかなかにヤバイ状況でした。
エリザベートの寝室の前でドアにすがって「部屋に入れて~」と嘆くフランツの歌詞にもありますが、外交・財政・戦争・革命・チフスの流行と、とにかく問題が山積み。
重臣が謁見する場面でも戦争について歌われていますが、エリザベートとお見合いしていたちょうどその頃、クリミア戦争が勃発していて、オーストリアはロシアにつくべきか、それともイギリスやフランス側につくべきか立場を決めかねていました。
ゾフィーは「オーストリア皇帝は何も決める必要はありません!」とお見合いに行っちゃいましたが、実は決める必要が大いにあって・・・このクリミア戦争でどちらに味方するかはっきりさせなかったオーストリアは、ロシアからは恨まれ、イギリスやフランスからは遅れをとり、その後の外交において色々と問題が出てくることになりました。
また『エリザベート』の時代は『1789』のフランス革命より後の時代です。
ヨーロッパ各地では王が君臨する専制君主制からの自由化、民族としての独立を目指す気運が高まっていて、それはオーストリア領土内でも同様でした。
フランツが皇帝になる少し前の時代には、民衆の声におされて自由化に歩み寄る政策をとっていたのですが、民衆の抑えがきかず暴徒になったり、皇帝になったばかりのフランツが市民に暗殺されかけた事件があったりしたので、フランツは革命を厳しく弾圧する政策をとるようになります。
「息子は自由と叫んだだけなのに、死刑だなんて・・・」と死刑囚の母が嘆いたのも、こうした弾圧路線がしかれていたためだったのですね。
ただ、「だめ!」と言われると反発したくなるのが人間ですので、弾圧されればされるほど革命・自由を求める風潮は強まります。そのために、それを抑えるための軍隊にお金を費やし、また戦争もあったりして、国の借金はどんどん増え、臣民への税金はどんどん増え、ますます反発は強まり・・・フランツが皇帝だった時代のオーストリアは、まさしく冬の時代だったといえます。
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責任おもすぎてつらいよ
若くして皇帝になったフランツ。
エリザベートの部屋のドアにすがって嘆いていた時は、およそ25~28歳。アラサーです。アラサーが担うには、先ほどあげた幾つもの問題は荷が重すぎます。
「荷が重いなら、みんなの意見を聞けばいいじゃない?」と言いたくなりますが、そうはできなかったのがフランツの皇帝という立場。
先ほど書いたように、フランツは革命反対の立場でした。
「皇帝の地位は、神様から与えられたものだもん!」という立場をとっていました。
『1789』でアルトワ伯が「私は神だ!」と王家の血筋について豪語していますが、それと似たような考えです。フランツはマイルドな感じのアルトワ伯だったんですね。
神様から与えられた特別な立場だから、その権力は絶大でした。
軍隊の指揮権も、その他もろもろの大事なことの決定権も、すべて皇帝にありました。
自分の「許可する」「却下する」のひと言で、人の命も国の命運も左右されるのです。
フランツには皇帝としての義務を果たす自覚はあったと思いますが、そのストレスたるや想像するだにすごいものがあります。
そりゃあ、愛する妻のドアにすがって癒してほしい気持ちもなるほど納得です。
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母が強すぎてつらいよ
皇帝の立場は神から与えられたもの、と先ほど書きましたが、実はフランツにとって、この皇帝の立場は現実的には母・ゾフィーから与えられたものでした。
「ゾフィーが前の皇帝と結婚して、その子ども・フランツが皇帝になった」のではなく、「ゾフィーがわが子・フランツを皇帝にした」のです。
フランツの前の皇帝は、ゾフィーの夫ではなくその兄、フランツの伯父にあたる人でした。
この皇帝は心身に不調があり、政治の実権は重臣たちが握っていました。
ゾフィーは伝統を重んじる人で、かつ「宮廷で生きる女性」としての意思力・行動力に満ちた人でした。彼女は皇家に嫁いだ女性の義務として、皇帝に実権が戻るように画策します。
自分の夫が皇帝には不向きだと思った彼女は、自分にも皇后になれるチャンスはあったのに、それを捨てて、自分の息子に皇位を継がせることに成功します。
「皇后の努めは自分を殺して、すべて皇家に捧げること」とゾフィーは歌っていますが、彼女の人生は自己抑制・自己犠牲の連続で、なんとも説得力があります。
そんな母がいなくては、フランツは皇帝にはなれませんでした。
自分を産み、そして皇帝の立場を与えてくれた母・ゾフィーは、フランツにとって神のような存在だったのかもしれません。
NOW ON STAGEのなかで、美弥さんはゾフィーに対して「恐れる感じがある」と言っておられました。神様を恐れ敬うような思いを、フランツは自分の母に抱いていたのでしょう。
「マザコン皇帝」だなんだと言われていますが、エリザベートの初産のあとで妻とわが子にはじめて対面したとき、妻をいたわり、赤ちゃんをあやしながら、その場に居合わせたゾフィーに「これでいいですか?」と逐一確認するような視線を送っていたフランツの姿を思うと、強すぎる母の前でいつまでも「子ども」でいることの自覚を余儀なくされる、可愛そうな少年・フランツが連想され、胸がしめつけられる思いがします。
フランツがシシィを愛したことは、彼にとって、唯一の反抗だったといえます。
母からの愛は上下関係のある愛ですが、シシィとの愛はいわば対等な愛。
だからこそ、彼はシシィの愛をあれほどに追い求めていたのかもしれません。
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つらつらと書き連ねてしまいましたが、やはり声を大にして言いたいのは
美弥るりかさんのフランツは絶品
という事実です。
繊細な皇帝の感情がよく表れていて、ビジュアルがよくて、
ルドルフに対しての厳格さに君主の威厳が垣間見えて、お髭がよく似合っていて、
だんだんとモフモフしてきた頃に、最終答弁の場面で急にお髭がとれたりして、
フィナーレでは溢れんばかりの色気で踊っていて、「あの色気があったら、さしものシシィもなびいたのでは…?」と歴史が変わっちゃう予感をヒシヒシ感じたりできて。
もちろん、たま様トートもちゃぴザベートも絶品たまらんですので、次回はトートもしくはエリザベートについて語りたいと思います。
ここまでの駄文・長文をお読みくださり、ありがとうございました。
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僕はバディロスが怖い〜月組公演観劇レポート〜
はやいもので、2018年の4分の1が過ぎましたね。
吹く風にも春のいぶきを感じる今日このごろ、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
だいすんでございます。
宝塚大劇場では月組の新人公演も終わり、本公演も残すところあとわずかとなりました。
公演が終わってしまわないうちに!
ショーの感想のつづきを書きたいと思います。
(※ 以降、ネタバレを含む記述がございます。ご留意ください。)
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美弥るりかさん
中性的な魅力、というものは、男役になくてはならないものの一つであると思います。
男なのか、女なのか、一見するとよく分からない。
分からないからこそ気になるし、そのグレーさに人は魅了されるのかもしれません。
美弥さんのSWEET HEARTを見て、そんなことを考えました。
ほんとにはまり役だと思います。
お衣装も、役柄に合わせてか、男役にしては少しタイトなしつらえであるように思いました。
だから、体の線が割とはっきりと見えて、美弥さんの持つ本来の色気がいかんなく発揮されていて、非常にけしからんし、最高でした。
個人的に大好きなのは、チマチマした悪事を重ねるBADDYにしびれを切らすソングの歌詞。
「♪~ 昨日 食い逃げ 今日は駐車違反 スケール小さすぎやしませんか」みたいな歌詞です。
なんか、山口百恵さんの歌のような、昭和の歌謡曲的な雰囲気のあることば選びなんですよね。
ちょっと凄みがあって、SWEET HEARTにひそむダークな雰囲気や「ただ者じゃない感」を感じさせるこの歌詞。
声にまで色香がほとばしる美弥さんに歌われるもんですから、ただただ発汗あるのみ!です。
次回作『エリザベート』では皇帝・フランツを演じる美弥さん。
果たしてモフモフのおひげは似合うのか。そもそも美弥さんならマザコンでも許せるのではないか。マダム・ヴォルフのコレクションも遠慮なく召し上がっちゃうんじゃなかろうか。
などなど、愚考はつきませんが、新たな大役に臨まれるのが早くも楽しみです。
月城かなとさん
たま様のBADDYが素直な悪い子だとしたら、月城さんのポッキー巡査は素直ないい子。
良家のおぼっちゃま的なキャラクターで、少年の心を持った青年といった人物です。
愛希れいかさん演じるGUDDYが大好きで、いつも彼女を陰に陽に見守っているその姿は、まさに誠実そのもの。
そんな誠実さが売りのポッキー巡査ですが、このショーの中では、誰よりも振り幅ひろく、善と悪を行き来します。
誠実さや真面目さが、時に脆さや滑稽さをはらんでいること。
真面目であるがゆえに、人一倍悩んだり苦しんだりすること。
そして、それらの苦しみを乗り越えたさきに、深みのある人間性が生み出されること。
そんなことを、このショーを通してポッキー巡査から感じました。
冒頭からコミカルなシーンが多く、あまりにも真っ直ぐすぎるその姿にちょっとした狂気も感じさせるポッキーさんですが、えげつないほど格好いい群舞のあとで、彼の苦悩の痕跡が明かされます。
ラストシーンで見せるその男らしさには、SWEET HEARTでなくとも魅了されざるを得ないでしょう。
月組に来てから、2作連続で客席に笑いを巻き起こす役柄を演じる月城さん。
今後、主演公演も控え、また『エリザベート』でルキーニを演じることが決まっています。
月組に来て、今後、ひと皮もふた皮もあらたな魅力を開花させていかれるであろう未来に、期待せずにはいられません。
その他、出演者のみなさま
ほんとうに書き切れないくらい、月組生の小芝居が充実していて、困ったもんです。
今公演での退団が決まっている宇月颯さんと早乙女わかばさんの悲恋模様も見どころです。
こうして、退団者にしっかりとした見せ場があり、それがまたごく自然に展開されているところに、演出家の深い愛を感じます。
暁千星さん演じる王子さまの葛藤も、経過を追って見ていると面白いです。
役柄はあざとさすら感じるくらいに可愛らしくて母性が臨界点を突破しそうになりますが、やっぱりありちゃんさん、ダンスがとてもうまいです。
芝居・ショーともにダンスの見せ場がたくさんあって、なんだか若手のころの柚希礼音さんが思い出されました。
歌唱力や演技の幅ともに、与えられた役割を通して着実に身につけてきている暁さん。
まだ新公内というのが衝撃ですが、これからも頑張っていってほしいと老婆心が騒ぎます。
だいぶ長々と書きましたが、最後にどうしても触れずにはいられない。
宇宙人・輝月ゆうまさん。
衝撃のメイク。飛ぶように売れるスチール写真。異彩をはなつ劇場ロビーの写真。
でも、衝撃なのはメイクだけではありませんでした。
舞台に出ている間中、おそらく群舞以外の場面では、輝月さんの指はずっとピロピロと動きつづけています。
中詰めはもちろん、銀行舞踏会の場面でのびやかにオシャンな曲を歌いあげているその最中も、ずっとピロピロ。パレードもピロピロ。ずっとピロピロ。
オペラでピロピロを見ていたら、思わずこっちの手もピロピロしてきてしまうので注意が必要です。
どうか、東京公演の千秋楽まで腱鞘炎にならず、無事にピロピロをまっとうしていただきたいです。
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長くなりすぎてしまった感がありますが、こうして感想を書いてみてあらためて『上田久美子のショー作品』なんだと感じました。
一人一人の人物について考えれば考えるほど奥深く、シンプルなテーマだからこそ観る側に想像の余地が多分に残されている、そんな感じがします。
いつか1時間半のお芝居で、この『BADDY』の世界観を描き出してほしいとすら感じる作品でした。
もう今から東京千秋楽後の「バディロス」が怖くてたまりませんが、月組生のみなさんが日々あらたな完成を目指して邁進されることを楽しみにしたいと思います。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
月組が観たい、チケットが欲しい、財布はカラカラ、残高ドキドキ〜月組観劇レポート〜
みなさま、ご機嫌いかがでしょうか。
だいすんでございます。
今回は、月組公演「BADDY~悪党は月からやってくる~』のレポートを書きたいと思います。
三角関係・矛盾・葛藤をかかせたら右に出るものはいない(※個人的見解です)、あの、上田久美子女史によるショー初演出は、月組でした。
お芝居の初演出は、これもまた月組の『月雲の皇子』。主演はどちらも珠城りょう。
上田先生とたま様とのあいだの絆を感じずにはいられませんが、観劇中はそんな絆を感じている余裕もないくらい、頭は混乱・心はグチャグチャに興奮する、そんなショーでございました。
タイトルからして、また公演の解説文からして、ぶっ飛び感満載のショーなのではないかと思っていたのですが、意外や意外、いや、あの上田先生の演出と思えば納得の、根底のテーマはまじめなショーでした。
以下、感想です。
(※例によって、ネタバレを含む記載があります。ご留意ください。
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- 珠城りょうさん
きました。ついにきました悪い役。開演アナウンスからして飛ばしています。サングラスをかけています。たばこも吸っています。銀橋にも寝転んじゃいます。食い逃げもしちゃいます。あんなことや、そんなことです。
たま様BADDYの好きなところをあげたらキリがないのですが、大きく2つ挙げると、ビジュアルとキャラが最高に好きでした。
見た目・・・たばこを吸う手元・口元はもちろんなのですが、なんと言ってもそのカツラ。Twitterにも書いたのですが、若干モジャモジャ感のある毛足の長いあのカツラが、どうしてもモンチッチに見えるのです。
グラサンをかけてたばこを吸うモンチッチたま様・・・・・・。
ものすごく母性をくすぐられて、大悪党のはずなのに愛さずにはいられません。大悪党というよりガキ大将みたいに思えます。「悪いことしてやるぜ!」という意気込みにも「まぁまぁ、夕飯までには帰っていらっしゃいよ」と言いたくなるくらい、なんだか可愛い風貌なのです。
見た目だけではなくキャラにも可愛らしさがあります。
GUDDY(愛希れいかさん)に追いかけられるのも自分が好きだからと素直に信じたり、SWEET HEART(美弥るりかさん)に叱られてガビーンとなったり、お土産ひっさげてただいまを言ったり・・・
きっと根は素直で、悪いことにも大まじめに取り組む人で、ただ、ピースフルプラネット地球のうさん臭さや融通のきかなさに愛想を尽かして、自由に生きられる月の世界に確信犯的に移住したんだろうなぁ・・・と、思わずスピンオフ的なものを考え出さずにはいられない、そんな可愛いBADDY様なのでした。
- 愛希れいかさん
これまで愛希さんは、ハーミアやジュリエット、カルメンやグルーシンスカヤと、いろいろな役を演じてこられました。
少女から大人の女性まで・・・このショー作品では、1時間の中でいろいろな愛希さんを楽しむことができます。
個人的には、ロケットダンス前後でのGUDDYの変化に、娘役・愛希れいかの真骨頂を見たように思いました。
「怒り」「憎しみ」と「愛情」「恋慕」。
相反するグレーな感情は、まっしろホワイティな世界で生きてきたGUDDYにとって、とても新鮮で生き生きとしたものだったのでしょう。
それまで可憐な女の子だったGUDDYは、このロケダン以降、赤いドレスのよく似合う大人の女性に変身します。
特に、たま様とのデュエットダンスには胸を打たれました。
生と死、愛と憎しみのはざまで踊るBADDYとGUDDY。
愛する人を捕まえて(もしくは殺して)自分は生き延びるか、憎むべき相手とともに死ぬか…。
デュエットダンスは愛と幸せの絶頂のなかで結ばれる2人を描きだすようなイメージがありましたが、今回のショーでは、濃度100%の葛藤のすえに結ばれる2人が描きだされていました。
こんなかたちのデュエットダンスもアリだなと思わされる、そんなシーンでした。
個人的にロケダンの場面で、同期の晴音アキさんとともに下級生を従えて誰よりも激しく踊る愛希さんの姿を見て、ふと、これが愛希れいか最後のショー作品なんだとの思いがあふれ、感慨ぶかいものがありました。
トップ娘役・愛希れいか。
その最後の輝きの瞬間まで、しっかりと、応援し続けたいと思った、そんなショーでした。
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こうして書き始めてみると、ひとりひとりの出演者にドラマがあって、何回見たら全体像を把握できるのかとめまいがしてきました。
まだまだ書きつづけたいところですが、少ししんみりムードにもなってきたので、続きは次回の更新で。
次回は、美弥さんのSWEET HEARTの麗しさ、月城かなとさんのポッキー巡査の愛らしさ、宇月颯さんのしびれるかっこ良さ、輝月ゆうまさんの宇宙人のピロピロ・・・などなどについて書いていきたいと思います。
今日からともみ。〜月組公演観劇レポート①〜
長かった・・・・・・。
月組初日から1週間と数日・・・・・・。
スカイステージ、公式HP、Twitterなど、すべてのメディアの情報をセルフ規制し、万全のまっしろな心で迎えた今日のmy初日。
端的に申しましょう。
つっきぐっみ、最高!最高!最高!!
以下、観劇レポートです。
まずはお芝居から。
※ネタバレを含む記載があります。ご留意ください。
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伊吹有喜さん原作のお芝居、『カンパニー』。
パンフレットで演出の石田先生もおっしゃっていましたが、原作の流れはベースにしつつも、多分に舞台オリジナル要素を含んだ展開となっています。
なかでも大きな変更点は、主人公・青柳誠二(原作では誠一)の年齢や状況でしょう。
原作の青柳さんは、いわゆる、しがない中年サラリーマン。
仕事一筋!というのでもなく、ただ与えられた役割を地道にこなし続けてきた「つまらない」男性でした。
一方、その地道さや「つまらなさ」という性格はそのままに、宝塚版の青柳さんは若手のサラリーマンに。
割と理不尽な理由で離婚された原作とは異なり、最愛の妻と離別している、という設定です。
冒頭、亡き妻の写真をスマホで眺めながら「ともみ・・・今日も一日頑張るよ」と呟く青柳さん。
おそらく、妻を亡くしたこの2年間、そうして朝一番の挨拶を亡妻に呼びかけることが、彼の日課になっているのでしょう。
「私の本名がともみだったら・・・!」という、客席中のともみじゃない人たちの無念さを背に、青柳さんは上司に意見してまさかの戦力外通告。出向先のバレエ団の公演を成功に導くために、門外漢のバレエの世界に飛び込みます。
現代の日本が舞台のこのお芝居。
「東京オリンピック」やLGBTに関する話題などにも触れられていて、宝塚らしからぬ意外性を感じさせます。初見の時は、そんな社会派感あふれる台詞が少々気になりもしましたが、そこは演技の月組。
言い回しや抑揚の工夫、間の取り方がだんだんと洗練されていくうちに、違和感も少しずつ抑えられていくように感じました。
現代の日本を、夢の世界の大横綱である宝塚で描き出すのは、相当のむずかしさがあると思います。
現実感がなくてはいけない。
でも、宝塚らしさ=究極の非現実感もなくてはならない。
実際「夢を見せる」という点では、「人事考課」や「バレエ団の実情」「舞台人とファンとの関係」などの現実的なテーマを取り上げるのは、かなり危険な賭けであったと思います。
宝塚の舞台に浸る3時間は、多くの観客にとっては現実を忘れることのできる時間です。
どんなにつらく、しんどいことがあっても、宝塚の非現実性にどっぷりつかった後は、また頑張ろうと日常生活に戻ることができる、という方は、私以外にも多いのではないでしょうか。
私個人としては、「カンパニー」の観劇中、ふと自分の現実生活をかえりみながら観ている瞬間は、他の公演と比べてすこし多かったという実感があります。
ですが、それと同時に、今までに感じたことのなかった不思議な感覚も感じました。
それは、舞台と客席の距離感の近さです。
舞台上の世界はもちろん虚構で、現実世界にあんなにハンサムなサラリーマンはいないし、コンビニであんなにキュートな店員さんと出会うこともめったにありません。
ただ、その登場人物たちが息づいている世界は、私たち観客がさっきまでいた現実世界とおんなじなんだ。
という思いは、舞台と客席の間にある壁をぐっと薄くして、「おなじ世界を生きる人たち」に対する親しみすら感じることができました。
「リストラの危機」「癌による妻の死」「バイトをしながら夢を追いかける」
あまりに現実的すぎるテーマは諸刃の剣でもあったでしょうが、月組生たちの熱演により、今までにない親近感や血肉の通った共感を、私は登場人物たちに感じることができました。
ラストが大円団で終わるのも救いがあって、観終わった後はなんともほっこりすることができました。
ほっこり、とは言いつつも、
美弥るりかさんや愛希れいかさん、暁千星さんなど、踊りの名手たちのバレエを堪能できるし、たま様のワイシャツ+タオル姿や法被、浴衣姿、リュックサック姿、スーツケース姿も堪能できるし、まゆぽんがラーメン食べてる姿も堪能できるし、舞台のあちこちで繰り広げられている月組生の小芝居も堪能できるしで、目があと6個くらいあったらいいのに、というお芝居でした。
今後もどんどんブラッシュアップされていくのがたのしみです。
次回は、破天荒・破格・悪徳非道のショー『BADDY』について
溢れんばかりの感想を述べたいと思います。
月組全国ツアー 観劇レポート〜クリスタルは明太子の煌めきにも似て〜
冬将軍、到来。
だいすんでございます。
昨日の「FNS歌謡祭の乱」。
まだ傷が癒えていないまま、したためております。
『まもなく!』『このあと!』『いよいよ!』
前回の月組での経験がまったく活かされないどころか、「たぶん最後の方だし少しぐらい残業しても・・・ゆっくりしてても・・・」という油断を逆手にとったまさかのトップバッター。
幸か不幸か、及川光博さんと真風涼帆さん率いる宙組生との「勝手にしやがれ」コラボはちょっぴり見られたので、それを励みに頑張っていこうと思う次第でございます。
さて、昨日に引き続き、今週末に千秋楽を迎える、月組・全国ツアー公演についてです。
今日は、ショー『CRYSTAL TAKARAZUKA~イメージの結晶』の感想を、思いつくままに述べたいと思います。
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このショー、言わずもがな、再演物でございます。
初演は、記憶にも新しい2014年。龍真咲さんを冠する月組が上演しました。
そのころ、寡聞にして私はたま様の存在を、ひいていえば宝塚そのものについてきちんと認識しておらず、
「あのがたいのいい人、ソロで歌ってるな」とか、「あのがたいのいい人、なんかイケイケスーツで出てきたな」とか、
主題歌の『♪ ~ モーメンッツ モーメンツ』が好きだとか、その程度の感想しか抱いておりませんでした。
あれから、早3年・・・・・・・。
「あのがたいのいい人」こと、珠城りょうさん率いる月組の『CRYSTAL TAKARAZUKA』に、遠く故郷を離れた博多の地で、再会いたしました。
以下、気持ちのおもむくままに、好きだったポイントを列挙していきたいと思います。
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- 超絶技巧のオランピアと適応力の鬼・ホフマン
このショーの中でも特に好きな場面が、このドールオペラの場面です。
「オランピアが変な博士にさらわれちゃったから、名探偵ホフマンさんに探してもらおう」というストーリーのこのシーン。
オランピアちゃんは愛希れいかさん、ホフマンはもちろん、珠城りょうさんです。
この場面、とにかく愛希さんのダンスがすごい! 衣装や照明と相まって、本当にリカちゃん人形みたいに見えてきます。
特に、いったん人間に戻り、ホフマンさんと幸せダンスを踊っている最中、徐々に人形に戻ってしまうくだり・・・。
今回、オペラグラスを覗いていて分かったのですが、体の動きだけがカクカクとなってしまうだけでなく、表情までも、幸せたっぷりの笑顔と無機質な無表情とに切り替わっていました・・・!
初演を観たときもかなり印象的なシーンだったのですが、今回、愛希さんの表情を捉えられたことで、より印象深くなりました。
ちなみに、ロン毛のたま様ホフマンもみどころ。
変な博士に見つからないように・・・と、所々で人形たちに混じってドールダンスと同じ振りを踊るのですが、「探偵になる前は絶対にダンスやってたよね」とツッコまずにはいられないほど、初見で、ものの見事に踊ってのけています。
サッカーができる名探偵や、じっちゃんの名に賭ける名探偵、灰色の脳細胞の名探偵など様々な人が存在する探偵業界ですが、ぜひ、「ダンスができるイケメンロン毛名探偵」も付け加えたいところです。
- バンボレーオ‼︎
突然ですが、月城かなとさんの声が好きです。
口跡が良くて、耳なじみが良くて、深みがあって。
たま様と声質もすごく似ていて、2人の歌声の混じり具合も素敵だなーと思いながらお芝居、ショーと観劇してきて、この中詰。
月城さんの「バンボレーオ!!」にすべて持っていかれました。
「バンボレーオ!!」の一声で、劇場中が月城さんに集中するのが分かりました。
印象に残りすぎて、夕飯を食べたお店の店員さんの「いらっしゃいませ」すら、バンボレーオのリズムに聞こえる始末。
シンデレラの場面の「これ、モツ」発言と相まって、博多のお客様にも月城さんの印象はガッツリ根付いたと思います。
余談ですが、「ジョビジョバ」にて、全力で歌い踊る蓮つかささんと、涼やかに歌いあげる紫門ゆりやさんとの対比も面白かったです。
- 幸せの奔流・デュエットダンス
デュエダンでございます。「たまちゃぴ」のデュエットダンスでございます。
ショーのクライマックスにして最大のしあわせ時間。
優しく相手役を見つめる男役の瞳、その瞳に包まれて自由に踊る娘役。
これ以上のしあわせがこの世のどこにあるだろうか。
そう思わせてくれる雰囲気が、「たまちゃぴ」のデュエダンにはあると思います。
そんな2人のダンスを観ながら、今年の始め「カルーセル輪舞曲」のデュエットダンスが思い出されました。
素人の私が言うのもおこがましいですが、どこか、まだ初々しさが残り、表現したい雰囲気や醸し出したい空気感はあるのだけれど、2人の一体感、曲との調和・・・今ひとつ発展途上のような印象を受けました。
観劇を重ねるうちに、少しずつ纏まっていく様子があったのですが、往年のトップコンビの一分の隙もないデュエットダンスを思い起こすと、もっともっとより良くなるはず、という思いがありました。
それから月日を重ね、博多座公演、大劇場公演と・・・
ともに切磋琢磨し、日々の舞台を弛まず勤めあげてきた、その努力と信頼の結晶を、この全国ツアー公演のデュエットダンスに見ることができました。
デュエットダンスは、2人で踊るダンスです。
ひとりではなく、2人だからこそ踊ることができる特別なダンス。
「たまちゃぴ」と名付けるのは簡単なことですが、名実ともにコンビになってこられたんだと、そう思った2人のダンスでした。
たま様なんて、もう「相手役から目を離してはいけない」という掟があるかのように愛希さんを見つめ続けちゃっていて、娘役を自分に置き換えるとかではなしに、もうこの2人のデュエダンに関しては、一生第三者でいい、と思ったデュエダンなのでした。
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さて、つらつらと書き連ねて参りましたが、今週末にはそんな全国ツアーも千秋楽。
どうか、最後まで一人の休演者も出ませんように。
そんなことを祈りつつ、記事をとじたいと思います。